遊漁船とは:釣り船・船宿との違いと、2024年に変わった決まり

遊漁船・釣り船・船宿は、どれも同じものを指します。違うのは呼び方だけです。ただし遊漁船は法律の言葉で、都道府県への登録が要ります。2024年4月に決まりが変わった点と、それが実際どこまで守られているかを調べました。

船釣りを調べていると、遊漁船という言葉に出会います。 釣り船や船宿と何が違うのか、と思われるかもしれません。

結論から書くと、指しているものは同じです。 遊漁船は法律の言葉で、釣り船・船宿は日常の言葉です。 ただ、法律の言葉であるということは、そこに決まりがあるということでもあります。 そしてその決まりは、2024年4月に大きく変わりました。

遊漁船とは何か

遊漁船業は、法律でこう定められています。

船舶により乗客を漁場に案内し、釣りその他の方法により水産動植物を採捕させる事業

遊漁船業の適正化に関する法律(昭和63年法律第99号)

船に客を乗せて漁場へ連れて行き、魚を釣らせる。これが遊漁船業です。 乗合の船釣りはもちろん、瀬渡し(磯渡し・防波堤渡し)や、採捕を伴う漁業体験も含まれます。 釣り堀や海釣り公園は船を出さないので、これには当たりません。

呼び方が3つあるだけ

遊漁船法律・行政で使う呼び方
釣り船いちばん普通の呼び方。船そのものを指す
船宿船を出している店のこと。「宿」とあるが、泊まる施設ではない

船宿に電話をして、遊漁船に乗る。それを釣り船と呼ぶ。全部同じ話です。

誰でも始められるわけではない

遊漁船業を営むには、都道府県知事の登録が必要です。届出ではなく登録で、 5年ごとに更新します。登録を取り消された事業者は、その後5年間は登録できません。

登録された事業者には、遊漁船業務主任者を置く義務があります。 主任者は必ず船に乗り、客の安全を確保します。船長が兼ねることもできます。

全国にどれだけあるか

国が公表している最新の数字です。

登録している事業者11,938
登録されている船14,618隻

水産庁「登録遊漁船業者数及び登録遊漁船隻数」令和8年3月31日現在

船の数のほうが多いのは、2隻以上を持つ事業者がいるからです。 とはいえ87%は1隻だけで、ほとんどが家族規模の小さな事業者です。 船の大きさも73.5%が5トン未満。私たちが想像するより、ずっと小さな船です。

1隻の割合・階層別隻数は水産庁「遊漁船業の現状と課題について」(令和4年7月時点)

都道府県別の登録数

都道府県業者数船の数都道府県業者数船の数
沖縄772906高知199230
北海道723833新潟191210
福岡578624佐賀184207
静岡568702大分176205
長崎563720鳥取174203
鹿児島514602大阪172212
三重503648岡山161197
青森446482秋田158184
神奈川430722茨城158181
和歌山412619徳島152196
兵庫406526宮崎137148
千葉364536滋賀134155
熊本333378山形106106
宮城321409香川100113
山口320338富山7278
広島315360福島6275
福井303402岐阜2627
愛知290358埼玉1819
東京262381山梨77
京都253293奈良66
愛媛232282長野56
石川219243栃木22
岩手206250群馬00
島根205237   
合計11,93814,618   

水産庁調べ・令和8年3月31日現在。滋賀・栃木・群馬などの内陸県にもあるのは、湖や河川で営業しているため

多いのは沖縄・北海道・福岡・静岡・長崎。ただし数が多い県が、 そのまま利用者の多い県ではありません。実際に人が乗っているのは 東京湾・相模湾のような大都市に近い海です。船は南と北に多く、客は都市部にいます。

2024年4月、決まりが大きく変わりました

遊漁船での死傷者は、平成24〜28年の平均が年32.2人、平成29〜令和3年の平均が年46.4人。 増えています。これを受けて法律が改正され、令和6年(2024年)4月1日から 新しい決まりが適用されています。

事業者に新しく求められるようになったのは、次の6つです。

1新しい業務規程を作る。安全管理と従業者教育を明記し、都道府県に届け出る。内容が基準に合わなければ登録・更新を拒否される
2業務主任者の管理・教育を行う
3重大な事故は都道府県に報告する。報告された事故情報は都道府県が公表する
4安全確保のために講じた措置を、原則インターネットで公表する
5保険は定員1人あたり5,000万円以上に引き上げ(従来は3,000万円以上)
6登録票を、原則インターネットで掲示する(従来は営業所への掲示だった)

水産庁「改正遊漁船業法について」令和5年12月・事業者向けパンフレットより要約

乗る側にとって大きいのは、4と6です。 これまで営業所に行かなければ見られなかった情報が、 サイトで確認できるようになった——はずでした。

実際には、まだほとんど公表されていません

そこで、調べました。自社サイトを持っている船宿199軒を1軒ずつ開き、 何が載っているかを確認しています。

公表されているもの軒数割合
遊漁船業者登録票(決まり6)52.5%
登録番号の記載73.5%
損害賠償措置の内容(決まり4)21.0%
安全確保に関する情報(決まり4)21.0%
業務規程に関する記載84.0%
業務主任者の氏名00%

自社サイトが開けた船宿199軒を1軒ずつ確認(2026年8月)

1つも載せていない船宿が182軒、全体の91.5%でした。 6つすべてを載せている船宿は、1軒もありませんでした。

公表の義務には例外があります。常時使用する従業者が1人以下で、 かつ自社サイトを持たない場合は、これまでどおり営業所への掲示で構いません。 ただし今回調べた199軒は、いずれも自社サイトを持っています。この例外には当たりません。

誤解のないように書いておきますが、これは船宿を責める話ではありません。 制度が変わってまだ日が浅く、ほとんどが1隻・家族規模の事業者です。 サイトを直す手が無い、というのが実際のところだと思われます(これは推測です)。 そして裏を返せば、きちんと公表している船宿は、それだけで信頼できる目印になるということです。

乗る前に、確認できること

法律を知っていると、船を選ぶときに見るところが分かります。

もうひとつ。業務主任者は必ず船に乗っています。 何か分からないことがあれば、その人に聞いて構いません。 釣りの指導だけでなく、安全のための助言も、その人の仕事です。

遊漁船に乗るには

予約は、いまも電話がほとんどです。全国の船宿400軒を調べたところ、 ネットで予約できるのは7.2%しかありませんでした。 料金は乗合で1人あたり12,000円が中心です。

初めて乗るときに必要なことは、はじめての船釣りにまとめています。 料金の内訳は船釣りの料金、 当日の流れは船釣りの一日をご覧ください。

つりざ 最終更新:2026-08-09

ほかの記事